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恩師のことば

東北大学法学部長の水野紀子が、パソコンの画面から視線を移し、研究室から見える銀杏の緑を眺めていたとき、研究室に東北大法学部4年の倉橋美咲が訪ねてきた。折り入って相談があるというのだ。

 

美咲は、優秀な学生で、紀子も研究者の素質があると感じていた学生だった。

美咲自身、民法研究の面白さを知って、研究者の道も考えていたようだ。

ただ、美咲は入学当初から公務員になることを考えていたこともあり、また結婚して温かな家庭を持つことも夢であった。

 

そんな美咲が、紀子のもとに、思いつめたような顔で自分の進路について相談に来たのだ。

「水野先生、女性の研究者は、家庭との両立は難しいのでしょうか。私にできるのでしょうか」

 

紀子は、美咲の言葉を受け止め、しばらく間を置いて静かにこういった。

 

「倉橋さん、女性だからといって、研究者の道をあきらめる必要はありません。

もちろん、家庭を持ちながらの研究は、大変なことです。

でも、研究者だからといって家庭を持つことができないわけでもありません。

子どもの成長を見ることは嬉しいことですし、結婚して子どもを育てながら研究を続けることは、研究者としての深みにもつながることですよ。

本当に研究をやりたいのなら、がんばってみませんか。あなたには研究者の素質があると思います」

 

こういいながら、紀子は、30年以上も前のあの光景を思い出していた。20代前半のころだ。

 

あの時、紀子は、東大本郷の銀杏並木の下をうつむきながら歩いた後、加藤一郎教授の研究室の扉の前でしばし立ちすくんだ。

紀子は研究者の道に進むかどうか迷っていた。当時、女性が研究者になる道は狭く閉ざされていた。

あの頃、すでに戦後30年以上経っていたとはいえ、まだ女性の研究者はごくわずかしかいなかった。

 

そもそも当時東大法学部で女子学生は50名に1人という割合で、希少な存在だった。

研究者になるためには、誰かの教授のもとで、研究をしなけければならないが、多くの教授の頭に「女性研究者」という概念がなかった。弟子につくこともままならなかった。

 

研究者になろうと思って、教授に相談しようとしても、「育てても就職先がないから、女性の弟子はとらないんだよ」という話や「一生結婚しないことを約束するならいいが、それでなければダメだ」という友人の話を聞いて、紀子は暗くなった。

 

あの加藤先生がそのようなことを言うとは思えないが、女性が研究者になるには、相当な覚悟が求められる時代だった。

 

しかし、私は研究を続けたい。紀子が民法のことを学べば学ぶほど、民法学者加藤一郎の偉大さ、奥深さ、凄みを感じていた。

私はその深淵をもっとのぞいてみたい。もっと加藤先生のもとで、研究を続けていきたい。

そう紀子は、強く思うようになっていた。

 

でも、結婚して子どもを持ち、温かな家庭ももちたい。

「指導教授から一生結婚しないことを約束させられるなんて」

両立はできないことなのだろうか・・。

私は欲張りなのか、結婚や子どもは諦めなければならないのか。紀子は大きくため息をついた。

 

加藤一郎教授の研究室の扉をノックするとき、胸の鼓動が高まった。

加藤先生は、何とおっしゃるだろうか・・・。

 

「加藤先生、私は研究を続けたいです。先生のもとで研究を続けて、研究者になりたいです。女性の私にできますか?」

穏やかに笑顔で迎えてくれた加藤教授に、紀子は胸の思いを一気にはきだした。

 

加藤教授は、紀子の胸の奥の思いを見透かしたように、優しい笑顔で紀子の目をまっすぐ見ながらこう言った

 

「法律の論文は、技術的なもののように思うかもしれません。

ですが、債権譲渡のような技術的なことを書いているようでも、どうしてもそれを書いた人間が出てしまいます。

優しい人の書いたものは優しい論文になるし、そうでない人の書いたものはやはりそうなってしまう」

 

紀子はうなずいた。確かにそうだ。加藤先生の論文には、鋭い文章の中にもどこか加藤先生の温かな人柄がにじみ出ている。

 

加藤教授は、穏やかにしかし力強く言葉を続けた。

 

「そしてできればあなたには、人間らしい顔をした論文を書いてもらいたいと僕は思います。

人間らしい論文を書くためには、背景に人間らしい生活を送る必要があります。

人間らしい生活というのは結婚して子どもを持つことだと僕は思います。

あなたは女性だから大変かもしれないけれども、がんばりなさい。

僕もできるだけのことはするから」

 

紀子は、その言葉に胸があつくなった。しばらく何も言えなくなった。

その後、言葉にならない言葉をようやく喉の奥からふりしぼって声に出した。

 

「加藤一郎先生、ありがとうございます。本当にありがとうございます・・・」

 

私は、幸せものだ。こんな素晴らしい恩師に巡り合えるなんて・・・。

あふれてきた涙が、頬をつたってこぼれ落ちた。

 

 

「僕もできるだけのことはするから」

 

その言葉のとおり、加藤先生は、その後ずっと私のことを支えてくださった。

紀子が、自分の能力を超えた仕事ではないか、と相談すると加藤先生は「背伸びをしなさい。背伸びをしないと背は伸びません」と優しく励ましてくれた。

感情的な文章を書くと「少し抑えて書いて、バネもためたほうが力がでますよ」と穏やかに諭してくれた。

そう、あれから、ずっと私のことを支えてくださったのだ。

 

 

加藤一郎先生・・・

先生のおかげで、今の私がここにいます。

少しでも私は先生に近づけたのでしょうか。

 

笑顔になって部屋を出ようとする美咲の後ろ姿を見送りながら、紀子は、静かにつぶやいた。

 研究室の窓から、まっすぐに空に伸びている銀杏の木を眺めながら、紀子は、亡き恩師が今も自分を見守ってくれていることを感じていた。

                       (おしまい)

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