遠くフロントガラス越しにページェントのシンボルツリーが見えてきた。

雨とページェントのためか、街は酷く渋滞していた。
車の中で、僕と君を乗せた車は、少しずつ光り輝くそのツリーに近づいた。

何度目の光景だろう。

こうして今年もまた君と一緒にこのツリーを見ることができたね。
５年前、はじめて見たとき、あの大きな樹の下で、しばらく二人並んで上を見上げていたね。

「とても綺麗だね。」

君はそう嬉しそうに言いながら、大きなツリーを見上げていた。
見上げる君の頬に真っ白な粉雪が落ちていた。
そんな君の横顔を僕は幸せな気分でしばらく眺めていた。

その澄んだ瞳にうつるページェントの光を見ていると、ずっとそばにいたい、ずっとそばにいれるはずだとそう信じていた。

先ほどまで雨だったしずくが、柔らかな雪に変わっていた。
車のテールランプが、とけた雪のしずくに赤くにじむ。
雪はふんわりとフロントガラスに落ち、そして淡く消えていった。

君は、君の夢を実現するために、東京へ行くことを決めた。
そして僕は、僕の居場所はここしかないと、この街に残ることにした。
それぞれ別の道を歩くことに決めた。
今年のクリスマスイブを最後に、もう会うのはこれで最後にしようと決めたんだ。

これが二人で見る最後のページェントツリー。

にじんで見えるのは、涙が流れているからじゃない。
涙のせいなんかじゃない。

シンボルツリーは、粉雪が舞い落ちる中、あのときと同じように光り輝いていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（おしまい）

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