「明日、雨が降りますように」

玲菜は、そう願って逆さてるてる坊主を部屋につるした。雨が降って欲しい、雨が降ればラジオ体操が中止になるから・・・。

子ども会の行事で、夏休みの終わり近くの４日間、公園でラジオ体操があった。
NHKのラジオ放送に合わせているので、午前６時３０分には、公園についていなければならない。

初日は、家族の旅行で欠席した。２日目の昨日から早起きして出席するはずだった。

昨日、午前６時すぎには目が覚めた。でも体は重く、頭では「いかなければ」と分かっていても、心は動かなかった。６時半ぎりぎりになっても、葛藤は続き、このまま時間が過ぎればと思ってしまった。お母さんが、すすめても、玲菜は動けなかった。

３日目。玲菜は、午前６時前に起きることができた。着替えもした。もちろん行くつもりだった。
ところが午前６時半が近づくと、やはり体が鉛のように動かなくなる。

・・・やっぱり行くことができなかった。

初日、２日目と休んでしまったこと、それが負い目となって、ますますラジオ体操に行きづらくなっていた。朝起きて、ラジオ体操に行けないことで、自分がダメな子のように思えてくる。

そして子ども会には、他に女の子が３人いて、その３人はグループで仲よく、玲菜はいつも一人、ぽつんとしてしまうのだった。
それも嫌だった。

雨が降って中止になれば、「いけなかった」ということにはならない。
自分は、行けない子ではない。ひとりになることもない。
だから、雨よ降って欲しい・・・。

そう玲菜は願った。

しかし、逆さてるてる坊主は、きかなかった。雨は降らなかった。朝６時に、目が覚めたとき曇り空で、あともう少しで雨が降り出しそうだったが、雨は降っていなかった。

行こうとはした。今日こそは、行かなければいけないとそう思った。それでも、やはり体は重く、動かけなかった。

お母さんは、そんな玲菜の様子を見て、無理に行かせることはしなかった。怒ることもなかった。「行かないでダメね」と言うこともなかった。

それは玲菜が、単に怠けたいというのではなく、自分なりに行こうとして努力しているのは、

知っていたからだった。

「玲菜、花火もらってきたよ。今晩、お庭でやろうか」

そう笑顔で、お母さんは、子ども会からもらってきたラジオ体操ご褒美の花火セットを玲菜に見せた。

玲菜は、その花火セットを見て、その小さな胸がいっぱいになった。

・・・お母さん、心配かけてごめんね。ありがとう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　（おしまい）

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