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「個人の尊重」を伝える
-何かを大切に思う気持ちに違いはないこと

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「個人の尊重」を伝える-何かを大切に思う気持ちに違いはないこと

弁護士 神坪浩喜

 

 私は、弁護士として法教育活動に携わるようになってから8年くらいになります。

 法教育とは、一般市民、特に子どもを対象として、個人の尊重を基底とした法の原理原則(正義、公平、立憲主義、無罪推定原則等)をふまえ、法的なものの見方・考え方ができ、主権者として民主主義社会に参画できるような自立した個人の育成を目指す教育です。私が考える法教育の目標を一言で言えば、憲法が最高の価値をおく「個人の尊重」の理念を子どもたちの心に浸透させていくことです。

 

「個人の尊重」とは、一人ひとりをかけがえのない存在として大切にするということです。一人ひとりをかけがえのない存在として大切にするということは、人を人として大切にするということであり、誰もが、国家や力の強い者、多数者から、何かの目的のための道具や手段、モノ扱いをされないということです。

 

「一人ひとり」には、他者のみならず、自分も含まれます。だから自分も大切にし、他者も大切にするということです。一人ひとりの人、誰もがこの世に意味があって生まれてきています。ぞんざいに扱われてよい命なんてどこにもありません。どの命も大切な命です。そして、誰もが、一人の人間として、自由に自分の幸せを求めて生きていけることが保障されなければなりません。

 

ところが、実際のところ、日本の現代社会においては、自由に自分らしく生きることは、なかなか難しいのではないでしょうか。憲法が保障する「幸福追求権」が、きちんと保障されているとは言い難いのではないでしょうか。競争社会で、いつも人と比べられて、人に勝たなければいけない、人より優位にたたなければいけないと追い立てられているようです。また、多様な価値観を受け入れることがなかなかできずに、自分とは異なる考え方の人や少数派の人々への理解が不足しているように感じます。どこか、多くの人々が自分を守ることで精一杯で余裕がなく、他者に寛容であることが難しい世の中であるような気がしています。

 

私は、幸せの前提は、人として大切に扱われることであり、人と争わずに温かくつながることだと思います。その上で、自分が自分らしく自由に生きるということです。きっと誰もが、人として大切に扱われたい、そしてできることならば、人とは争わずに温かくつながりたいと思っているのではないでしょうか。そして、型にはめられた幸せではなく、自分らしく自由に生きてみたいと心の底では誰もが思っているのではないでしょうか。

 

私は、仙台弁護士会の人権擁護委員会に所属していたのですが、そこでは、刑務所受刑者からの処遇に関する人権救済申立が多数よせられていました。その申立ての背後には、「自分を人として扱ってくれない」というような哀しみをよく感じます。また、弁護士の仕事をして、人と人との紛争の中に身をおいてみると、多くの紛争の背景には、相手が自分を人として大切に扱われなかったことについての相手への怒りや哀しみがあることをよく感じます。

 

人は、誰かから、人として大切にされず、モノや何かの道具・手段として軽く扱われたとき、深く心を痛めるものです。また、自分の意見を全く聞いてもらえず、無視され、一方的に何かを押しつけられたとき、哀しみや怒りを感じます。そして、自分をモノとして扱った国家や集団、誰かを恨んだり、反発したり、攻撃したりしてしまいます。そういったことが蔓延するとギスギスした乾いた社会になるでしょう。そうなると攻撃的で、不寛容で、些細なことでお互いに責め合う社会になってしまうのではないでしょうか。

 

逆に、誰かから、人として、自分のありのままの存在を大切にされたとき、人は、とても深い喜びを感じますよね。大切にしてくれた人のことは、きっと自分も大切にしようと思いますし、感謝の気持ちを抱き、信頼もするでしょう。お互いがお互いを人として大切にする社会は、信頼を基底にする社会であり、他者という存在は、攻撃したり、利用したりする対象ではなく助け合うもの、支え合う対象として捉えられ、優しく寛容な社会になるのではないでしょうか。

 

信頼と寛容をベースにする社会、自分も他者も人として大切にする社会になるためには一体どうすればいいのでしょうか。

 

まずは当然のことながら「人を人として大切にする」という意識を一人ひとりに浸透させることが重要です。人を何かの手段や道具にしてはならないことを伝えることが必要です。そしてさらに、それを実践するためには、次の二つのことを押さえておく必要があると思います。

 

一つは、人はそれぞれ違っているということです。

誰もが生まれたときから違っています。誰一人としてこの世に同じ人はいません。誰もが違って、この世に唯一のかけがえのない人なのです。生まれてきた環境、何が好きか、何が得意なのか、何を大切にしているのかは、人それぞれです。みんな違っています。

 

それからもう一つは、人は誰もが「自分フィルター」を通して世の中を見ているということです。自分は、どんなに客観的に物事を見ていると思っていても、それはあくまで自分が選んだ情報をもとに、自分の価値観を通して、事実を認識し評価しているのです。あくまで自分個人の「主観的な」ものの見方・考え方であり、自分は「偏っているかもしれない」、「間違っているかも知れない」ということを踏まえておかなければなりません。

 

ところが、つい人は、自分が思っているように人も思うべきだ、自分は正しい、間違っているのは相手の方だと思ってしまいがちなのですね。自分中心に物事を考えてしまいがちなのです。

特に、自分の考え方が多数派である場合には、自分達の考えとは違う少数派の考え方については、「異質だ」「変わっている」「常識ではない」等と思って、なかなか理解できないものです。

それぞれが「自分が正しい。相手が間違っている。」と一旦思いこんでしまうと、ぶつかりあって、反発し合い、共に同じ社会で暮らしていくことは難しくなってしまうでしょう。

ですから、「人はそれぞれ違っていること」そして「人は物事を自分フィルターを通して見ていること」この二つのことをまず押さえておかないと「人を人として大切にする」ということは、困難なことではないかなと思っています。

そして、これは、なかなか普段暮らしていく中では、会得しにくいものです。だからこそ体験的な「教育」によって伝えていく必要があるのです。人を人として大切にするために大切なことは、自分の考えを絶対視せず、他者の意見を鵜呑みにすることなく、常に自分の頭で考え続けるということです。政府や偉い誰か、メディアが、言っているからといって鵜呑みにはしないこと、思考停止しないことです。参考にはしても、自分の頭で「それは本当にそうなのかな?」と考え続けなければ、情報を提供する側が意図するまま、考え方を操作されることにもなりかねないのです。

他方で、弱い立場の人、少数の人、自分とは正反対の他者の意見や価値観も尊重にするということです。尊重するとは、自分と考え方や価値観の違う誰かの意見を、排斥したり、無視したり自分の考えを押しつけたりすることなく、受けとめるということです。

 

では、自分とは異なる価値観や考え方を受けとめるために必要なことは何でしょうか?

二つあると思います。

一つは「想像力」です。相手が大切にしているものを知ろうと想像することです。
自分とは違う考え方の人がいるということ、自分の考えだけが絶対ではないということをふまえて、相手の立場に立って考え、相手にも大切に思っている何かがあるということを想像することです。

 

二つめは、しっかりと相手の意見に耳を傾けることです。言葉を通じてお互いの考えをよく知り合うということです。

法教育授業では、人はみな違っていること、自分の考えとは違う考え方があること、そして違う考え方の人の立場を想像することが大切であるということを体感してもらうために、様々な価値観がぶつかり、はっきりとした正解がないような問題を、生徒さん同士の議論を通じて、生徒さんに考えてもらいます。そして、自分以外のいろいろな意見を聞いた上で、自分なりに考えた意見を発言してもらいます。

 

一つ例をあげましょう。仙台弁護士会では、毎年夏に中高生対象にジュニアロースクールを実施していますが、平成22年度は、高校生を対象にした法教育授業では、エホバの証人信徒輸血拒否事件(最高裁平成12年2月29日判決)を題材としました。

信教上の理由から輸血をしないでと頼んでいた患者と患者の命を救うために輸血に踏みきった医者といった当事者役が登場し、生徒さんに、自らの主張や心情をせつせつとうったえてもらいます。生徒さんは、当事者約の主張をよく聴いてもらって、患者から医者への慰謝料請求が認められるかを生徒さん同士で討論し、考えてもらいました。患者、医者、それぞれの立場があり、価値観があり、意見があります。その当事者役の声を生徒さんに聞いてもらって、それぞれの立場があること、それぞれの価値観があること、それぞれ大切にしているものがあるということを体感してもらい、その上で、生徒さん自身に考えてもらいました。裁判官でも判断が分かれた正解のない問題を考えてもらいました。

人は、往々にして自分の価値観を中心に、ものごとを判断していくものであり、自分と違う価値観についてはなかなか理解できないことも感じてもらいました。

自分と違う価値観は、その人の意見をしっかり聞くこと、そしてその人の価値観を意識して想像してみなければわからないものです。

患者さんは、命を助けてもらったのに医者を訴えたというものであり生徒さんにとっても理解しにくいものだったようです。命より信仰を大切にするなんて、よくわからない。医者に命を助けてもらったのに、輸血しないことにこだわって命の恩人のお医者さんを裁判で訴えるなんて、一体どうして?

でも、患者さんの、「輸血を絶対にしないで欲しい」という言葉の背景には、患者さんにとっては、自分が人として生きる上でとても大切にしているものがある訳です。命と同じくらい、時には、命以上に大切に思っているものもあるのです。

自分と違う価値観、特に相手の考えが少数なものであったとき、その価値観の存在を受け入れることは、本当に難しいものです。想像力を一生懸命働かせる必要があります。相手の言葉に意識的に耳を傾け、分かろうと努力する必要があるのです。

 

この授業を実際に担当した髙城晶紀弁護士は、授業の終わりにこう締めくくりました。
「その人の判断を尊重するというのは簡単ですが、しかもそれだけ聞くとそのとおり実行するのも簡単なように感じてしまいますが、その判断が、自分の価値観とはかけ離れたものであったり、自分の価値観と衝突するようなものであったりすると、人は、なかなか、その価値観や考えを尊重してあげようという気分にはなれないものです。
でも、自分にはその考え方は理解できなくても、自分に大切にしている価値観や信念があるのと同じように、その人にとってはその価値観や考え方が大切なのだということ、自分と相手の大切にしているものの中身が全く違っていたとしても、何かを大切に思う気持ちに違いはないのだということがわかれば、異なる個性、異なる価値観をもった人達が、互いに傷つけ合うことなく、一緒に生きていけるのではないかと思います。」

 

そうです。「何かを大切に思う気持ちに違いはない」のです。

 

憲法を頂点とする一連の法は、いろいろな価値観、考え方の人がいる中で、人々が共に幸せに生きることを目指すものです。共に幸せに生きることを実現するためには、人がお互いに傷つけあうことや争いごとを減らすことです。そして、「何かを大切に思う気持ちに違いはない」ということが、一人ひとりの心の中に落とし込めたならば、将来、今より、きっと争いごとは減り、人といがみ合わず人は人の中で自由に自分らしく幸せに生きることができるのだろうと思います。

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「一人ひとりをかけがえのない存在として大切にする社会」それは、すなわち憲法がうたう「個人の尊重」が人々の心に根付いた社会です。そんな温かな社会になっていくといいと思っています。

 

だから、これからも私は、憲法がうたった「個人の尊重」を子ども達に伝えるために法教育をやっていこうと思っています。

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